トラベル受付センターができるまで
昨年夏、アーツ前橋で行われた展覧会『表現の森 協働としてのアート』にて、《LDKツーリスト》を発表しました。生活空間で旅をするテーマのプロジェクトです。それ以来、「旅」や「人や物の移動」をテーマにしたワークショップをいくつか行なっていて、昨年12月10日には高崎市内で《●●で行く!見えない旅》を実施しました。昨今、子どもたちを取り巻く環境が変化し、子どもたちと気軽には遠出ができなくなっているように感じます。子どもたちと旅行をし、未知と対話する機会を提供したいところですがなかなかそうもいかず、そこで考えたのが、どこにも行かずに旅をするワークショップです。
このワークショップの主催は「子育て応援サークルハグクミ」のみなさんで、高崎・前橋で絶賛子育て中の主婦の方々を中心に結成されたサークルです。その一部のメンバーが、前橋で一緒に遊んでいる幼稚園を卒園した方々で、さらに毎月開催している「今月のワークショップクラブこんわく!」に毎回参加してくださっている方々です。ワークショップでいつも顔を見合わせている子どもたちが、友達を誘って来てくれますが、いつもと違うのはワークショップの準備時間にもその子達が主催のお母さん方に付いてきていることです。会場で遊んでいる子もいるのですが、何人かは”スタッフ”として道具を並べたり、看板を制作してくれたりと準備を手伝ってくれました。このような人の導線のための看板の場合、載せてほしい情報を大人のスタッフ側からある程度指示を受け、制作されることが多いのですが、基本的な指示をベースに、子どもたちなりに導線を考え、どこに何が必要か考えてくれているプロセスが見ていて面白かったです。
特にこの日は会場の外で縁日が開催されていたため、入り口にワークショップやってます!と書かれた看板があると予約していない人が入ってきてしまい、混乱を招く可能性がありました。そういった問題に突き当たりながら文言を試行錯誤し、「よやくせいです!ごめんなさい…。」と勘違いさせてしまった人に謝る張り紙をつくるところも指示に従うだけだと生まれないものだと感じます。このようにして、建物入り口から会場となる部屋まで、予約した人がたどり着けるよう考えられ、行き着く先が「トラベル受付センター」です。 ※これはもしかしたら「トラベルセンター受付」かもしれませんが。文法通りに読めば、「トラベル受付センター」となります。
ひとしきり道具を並べ、案内の看板をつくり終えた開始時間までの間、受付周りの準備に取りかかりました。この日のテーマは「旅」だったので、ワークショップの受付=トラベル(旅)ということなのでしょう!もしかしたら周りのお母さんの入れ知恵だったかも分かりませんが、少なくともワークショップ内容を企画した僕の指示ではなく、このようにテーマに沿ったデザインをしてくれたことはとてもうれしいし、僕の手やイメージを離れ、関係する人々の想像力と感性で形がつくられていくことはとても興味深いことです。 ワークショップという言葉の語源は「工房」を意味しています。アート系のワークショップの場合、アーティストやキュレーターが準備をした工作を手順に沿って習っていく工作教室のようなスタイルのものがワークショップと呼ばれることが多いですが、アーティストのイニシアティブに限らずに集まった参加者それぞれの想像力と感性によって自然と合意形成され、表現することが許される共同の工房としてワークショップの意味を捉えることもできるのかなとここ最近は考えています。
ちなみにこれはやはり「トラベルセンター受付」なのでしょうか?トラベルを受付するセンターなのか、トラベルセンターの受付なのか。見えない旅を企画するトラベルセンターという機関の受付であるよりも、トラベルの受付を専門にするセンターである方がおもしろそうな気がするんですが、あまり差はないのかしら?もっと時間があればここを拾って、膨らませられたらおもしろかったんだけど、それはまた次の機会の楽しみということで。
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