100m先に旅に出る
今日は高崎の中居学童でワークショップでした。依頼してくれたのはなんよ幼稚園の頃の同級生!ここ数年の間に前橋〜高崎あたりで行われているワークショップを見に来てくれていて、今回夏休みの親子レクということで初めてのコラボということになったわけです。幼稚園の頃のことは、あまり鮮明には覚えていないけれど、自分が子どもの頃にあったらよかったと思えるものを目指しているし、幼少期を共に過ごした古い友人とそういうビジョンを共有できることはとてもうれしい。
今回は学童という子育てを支える施設でのワークショップでした。普段は親御さんたちの仕事が忙しくて、なかなか一緒に過ごせない人も多いし、夏休みだからと遠くに出かけられない人も多いだろうと、「世界」をテーマにしたいと進んで行った。アートはそもそも、ここではない遠くのどこかに連れて行ってくれるものだと思っている。なのでアートに触れ、想像が広がっていくことは、「旅」である。といえば聞こえはいいかもしれないが、それはなかなか大人には難しいのかもしれない。子どもからしたら、今回の素材で使ったアルミホイルを丸くすればボールになるし、長く握れば剣になるような、想像の置き換えは朝飯前だろうし、大量に散らばるアルミホイルのかけらを集めて海に出かけることだって簡単なのだ、大人さえいなければ…!
日常生活の全てが、想像と創造に満ち溢れていることは難しい。創造的な行為は、時に破壊を伴うし、家にあるものは大抵、生活の必需品だ。アルミホイルがあるからと言って、全部出してみました、なんてことはなかなかお母さんが許してくれないのも当然だろう。しかし、せっかくアーティストを呼んで普段とは違うことを!と企てられているわけだし、お母さんが普段は許してくれないことをやってみるのもいいだろう。ということで、素材として準備してあった「業務用アルミホイル100mを、一回全部出してみる」をやってみた(Youtuberみたいだ)。
公民館の部屋(トップ画像右上のオレンジ色の建物2階部分)をスタートし、階段を降り、先頭が玄関からも出てしまっても、ロール本体はまだ最初の部屋にある。「ちぎれないように」100m出してみるのが目標なので、突っ走る先頭チームは外での待機時間が長くなるし、後ろと前ではお互いがどんな状況かは分からない。伝言ゲーム方式で状況を伝え合い、隣の人とのペースを合わせ、ちぎれないように声を掛け合い、ということが自然と起こった。先頭チームのアイデアで全部まっすぐにしてみたいということになり、敷地では足りなそうなので、隣接する小学校の塀沿いに出てみることになった。(ついついワークショップ会場を飛び出して、公道に出てしまう癖がある気がします。)きっとリスクアセスメントの視点で言えば、おいおいと思っている大人もいることだろうなと、頭の片隅では分かってはいるんですが、危ないからできない、というのは好ましくないと思う。できるか、できないかではなくて、どうやったらできるか、というのを考えるのが大事。それを瞬時に判断して、安全に楽しく過ごせるように体制を組み直してくれるスタッフさんがいて初めてできること。いつも多くの方にそうやって支えてもらって、自由度の高さが保てる訳です。ありがたい。
即興的な編集、というのは、最近気にしている言葉。今回は初めての開催でもあったので、事前にタイムテーブルなどの計画書を提出してありました。それを台本がわりにしてその計画通りにやっていくこともできるけど、参加者のリアクションや興味関心に即興的に寄り添いながら、プログラムを即興的に編集して、内容が変動していくことが多い。今回は「夏休みはどこに出かけたい?」という問いかけから出てきた「夢の中」や「口の中」というアイデアから宇宙に言ったり海に言ったり、花火大会をしたりと、計画書を書いている段階では想定していなかった展開になった。
終わった後に子どもから「ハサミを持ってきたけど、使わなかったね。」と言われた。ハサミ以外にも、スタッフさんたちが忙しい中駆け回って集めてくれたいろんな道具や材料があったけれど、大抵は使わなかった。それを無駄な準備だったということもできてしまうけど、そういうきめ細やかな準備があったからこそ、幅広い想定外が展開できるのだと思うから、それは使わなかったわけではなくて、そこに必要だから置いてあったものなんだと思う。